Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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じゅうにしこう

十二支考(上)〔全2冊〕

南方 熊楠

Lisez 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) de 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 290 735 caractères · 566 écrans

Aozora Bunko

十二支考

伝説一

伝説一

隙行く駒の足早くて午の歳を迎うる今日明日となった。誠や十二支に配られた動物輩いずれ優劣あるべきでないが、附き添うた伝説の多寡に著しい逕庭あり。たとえば羊は今まで日本に多からぬもの故和製の羊譚はほとんど聞かず。猴の話は東洋に少なからねど、欧州に産せぬから彼方の古伝が乏しい。これに反し馬はアジアと欧州の原産、その弟ともいうべき驢はアフリカが本元で、それから世界中大抵の処へ弘まったに因って、その話は算うるに勝えぬほどあるが、馬を題に作った初唄唱う芸妓や、春駒を舞わせて来る物貰い同然、全国新聞雑誌の新年号が馬の話で読者を飽かすはず故、あり触れた和漢の故事を述べてまたその話かと言わるるを虞れ、唐訳の律蔵より尤も目出たい智馬の譚を約説して祝辞に代え、それから意馬の奔るに任せ、意い付き次第に雑言するとしよう。智馬の譚は現存パーリ文の『仏本生譚』にも見えるが、唐訳律中のほど面白からぬようだ。

『根本説一切有部毘奈耶』にいわく、昔北方の販馬商客五百馬を駆って中天竺へ往く途上、一の牝馬が智馬の種を姙んだ。その日より他馬皆鳴かぬから病み付いた事と思いおった。さていよいよ駒を生んでより馬ども耳を垂れて嚏噫にも声せず、商主かの牝馬飛んだものを生んでわが群馬を煩わすと悪む事大方ならず、毎もこれに乗り好き食物を与えず。