Classiques japonais avec furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lisez 南国太平記 (なんごくたいへいき) de 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 493 291 caractères · 991 écrans
こういう時になると、それは技量の問題でなく、肚の問題であった。生死の覚悟如何の問題であった。二人の間に格段の相違があればとにかく、互角か、互角に近かったなら、それは、場馴れているとか、いないとかの問題でなく、自分の命を捨ててかかった方が勝であった。
(ここを逃れて――牧を討たなくてはならぬ――)
と、考えている奈良崎に、この覚悟がなかった。一木の、眼の凄さと、脚構えを見て
(さては――)
と、感じた瞬間、一寸、怯け心がついた。それは、剣道で、最も、忌むべきものとされているものだった。疑う、惑う、怯ける――どの心が起っても、勝てぬものとされているものだった。
奈良崎は、一木の光る眼、輝く眼、決死の眼が、礫のように、正面から飛びかかって来たのを見た。一木の両手の中に、紫暗色をして、縮んでいた刀が、きえーっ、と、風を切って、生物の如く叫びながら、さっと延び、白く光って、落ちかかるのを見た。
奈良崎は、避けた。それは、自分の命令で、避けたのでなく、本能的に、反射的に、身体が勝手に、自然に避けたのだった。それから、奈良崎の両手も、無意識に刀を斜にして、一木の打ち込んで来る刀を支えようとした。