Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

Lisez 四十八人目 (よんじゅうはちにんめ) de 森田 草平 (もりたそうへい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 183 caractères · 112 écrans

Aozora Bunko

そうはいうものの、いつもの癖か、足はおのずと柳島の方角へ向いていた。が、気がつくと、弾かれるように方向を転じて、わざと向島の土手へ出た。それから渡船を待ち合せて、待乳山の下へ渡った時は、もう日もとっぷりと暮れていた。彼は先を争って上る合客の後から、のっそり船着場を上って行きながら、何のためにこうして雪の降る中を宛もなしに歩いているのか、自分でもよく分らなかった。

「そうだ」と、彼は河岸の上に立って、真黒な水の面を見返りながら考えた。「俺はまだ死ぬ覚悟がついていないのだ! ついていなければこそ、こうして亡者のようにふらふら歩き廻っているのだ。だが、死ぬ覚悟をするために、俺はどれだけ苦しんできたろう? なるほど、俺は命が惜しい! 生れついての卑怯者かもしれない。だが、命が惜しいからといって、俺はまだ一度も命を助かろうとしてもがいた覚えはない。ただどうしたら命が捨てられるか、安んじて死んで行かれるかと、ただそればかりを今日まで力めてきた。それがためには、俺はかわいい女房をも殺そうとした。兄に大事を打明けたのも、じつはそのためだ。それでいながら、俺にはまだ死ぬ覚悟がつかない――この期に及んで、この土壇場に莅んで! 俺はいったいどうしたらいいのだ?」