Classiques japonais avec furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lisez 夜明け前 (よあけまえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 105 172 caractères · 206 écrans
さびしい時雨の音を聞きながら、酒にありついて、今度の事件のあらましを多吉の前に語り出したのもその半蔵だ。彼の献扇は、まったく第一のお車を御先乗と心得たことであって、御輦に触れ奉ろうとは思いもかけなかったという。あとになってそれを知った時は実に彼も恐縮した。彼の述懐はそこから始まる。何しろ民間有志のものの建白は当時そうめずらしいことでもなかったが、行幸の途中にお車をめがけて扇子を投進するようなことは例のない話で、そのために彼は供奉警衛の人々の手から巡査をもって四大区十二小区の屯所へ送られ、さらに屯所から警視庁送りとなって、警視庁で一応の訊問を受けた。入檻を命ぜられたのはその夜のことであった。翌十八日は、彼はある医者の前に引き出された。その医者はまず彼の姓名、年齢、職業なぞを尋ねたが、その間には彼の精神状態を鑑定するというふうで、幾度か小首をかしげ、彼の挙動に注意することを怠らなかった。それから一応彼を診察したあとで、さて種々なことを問い試みた。神田橋前まで行幸を拝しに家を出たのは朝の何時で、その日の朝飯には何を食ったかの類だ。医者の診断がつくと彼は東京裁判所へ送られることとなって、同夜も入檻、十九日には裁判所において警視庁より差し送った書面を読み聞かせられ、逐一事実のお尋ねがあったから、彼はそれに相違ない