Classiques japonais avec furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lisez 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) de 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 647 caractères · 215 écrans
しかしみ仏が次第に私を導いて行ったところは、必ずしも平穏な天国ではなかった。春風駘蕩たる時代でもなかった。仏像の美にひかれるままに経文を読み、また日本書紀や上宮聖徳法王帝説に接するにおよんで、私の眼ははじめて飛鳥の地獄にひらかれるようになったのである。とくに日本書紀を読んだことは、私にとってよろこびであるとともに非常な驚きでもあった。対外的のことは暫く措くとしても、国内的にみれば欽明朝より推古朝にいたるおよそ五十年のあいだは、眼を蔽わしむる凄惨な戦いの日々である。蘇我・物部両族の争いにとどまらず、穴穂部皇子や宅部皇子の悲しむべき最期があり、物部氏の滅亡についで、遂には崇峻天皇に対する馬子等の大逆すら起っている。しかもこれらの争闘は悉く親しい骨肉のあいだに起った悲劇であった。上宮太子が御幼少の頃より眼のあたり見られたことは、すべて同族の嫉視や陰謀、血で血を洗うがごとき凄愴な戦いだったのである。一日として安らかな日はなかったと云っていい。
仏法はいまだ漸く現世利益か乃至は迷信の域を脱しない。さもなくば政略の具であった。諸家の仏堂は徒に血族の屍の上に建立されたかにみえる。