Classiques japonais avec furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lisez 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) de 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 647 caractères · 215 écrans
新薬師寺附近でいえばむしろ南大門の前に立ったときの、豊かな田園のひらけた有様が好きである。旧聯隊の敷地を越えて、はるか生駒連山の裾にいたるまで、西南にのびた大和国原をしのぶ方がいい。或は春日山の麓近くをめぐって、白毫寺へ行く道筋も美しい。稲が深々と実って、稍々低地に建てられた農家を蔽うばかりである。それが鬱蒼たる森蔭にまでつづいた豊かなしかも寥々たる風景を私は好む。寧楽の盛時には、貴人はむろんかような風景をみつつ南大門から堂々と参詣したのであろう。
ともあれ現存の民家や道筋は、つぶさに眺めるものではないらしい。由緒ある古寺や城郭や茶室は、みるほどに深さをますのであるが、高畑の民家も築地も道筋も、みるほどに索然とする。これはみない方がいい。みないでただ何となく古さびた感じを心にだけ抱いて、黙って寺へまいるにしくはないようだ。さもなくば夜あるいた方がいいだろう。
道筋や民家とのみ限らぬ、古寺巡りも結局は夜の方がいいように思われてきた。高畑の路上でふと、自分は夜の古寺巡りを忘れていたことに気づいたのである。さきに述べた大寺にしても、後代の子細ありげな装飾や補修や、勿体をつけた有様や、また時には饒舌な坊さんや意地わるの案内人がいて、とかく気をくさらすことがあるのだ。