Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 902 caractères · 22 écrans
平民殿様はすっかり下々のことを呑込んでおります。「不義は御家の厳い法度」などは、この御殿では通用しません。
「飛んでもない、左様な覚えは毛頭」
「よいよい、お前の方に覚えがなくとも、多与里は大した執心じゃと申すが」
「一々左様なことに煩わされては、絵描き、彫物師などはたまりません。例えば歌麿、清長の昔から、亀戸の国貞に至るまで、幾人美女を描きましたことか」
「もうよいよい、言いわけは沢山だ。それより、いずれは多与里、小浪、梅野の三人腰元に暇をつかわして、良い縁あらば嫁入らせようと思っているところじゃ。幸い其方と采女と甚三郎はいずれも定まる配偶もない。差し当り、其方に多与里を嫁合せようと思うがどうじゃ」
「それは」
「よいではないか、半年も其方の長屋に通って、顔を合せた間柄だ。その上多与里はあの通り思い詰めている。よもや不足は申させぬぞ、余の申付けじゃ」
「ハッ」
六郷左京、こんなに驚いたことはありません。一時の方便で、多与里の恋心を煽ったには違いありませんが、それをまさか一生つれ添う女房として背負い込もうとは思いも寄らなかったのです。
同じ背負い込むなら――町人の娘の淋しい多与里より若くて明るくて、愛嬌があって、その上石川日向守一門の末に連なる石川玄蕃の娘、小浪を貰った方が、どんなに良いかわからないのです。