Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちぎりきぬ

契りきぬ

山本 周五郎

Lisez 契りきぬ (ちぎりきぬ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 757 caractères · 66 écrans

Aozora Bunko

云いながらおなつは帯を解き、肌衣と二布だけになった。そうして脇にある鏡台から鋏を取ると、手早くふつふつと元結を切り、ばらばら髪をふりさばいて立上った。

「おやおや、橘姫という拵えだね」

おてつが不審そうにこう云ったが、おなつはひきつったような顔で会釈をし、黙って裏口から外へ、はだしのまま小走りに出ていった。

まだかなりつよく雨が降っている。おなつは暗い路地を北へぬけ、まっしぐらに中通りを横切って、桶屋町の路地を小馬場の脇へ出た。武家町へ帰るには必ずそこを通らなければならない。いわば『河岸っぷち』への出入り口に当っているのである。――小馬場の柵に沿って、古い大きな柳の並木が茂っている、おなつはその樹蔭にはいって、はじめて息をついた。

髪毛の地から膚まで濡れとおっていた。肌衣の袖で乱れかかる髪のしずくをかきあげ、二布だけの膝を縮めた。――頭を幾たびも強く横に振り、なにも考えまいと、唇をひきむすんだ。

「誰が相手だって構うもんか」

頬へ垂れてくるしずくを手で拭きあげ、きらきらと光る眼で暗い宙を見あげた。

「――勝てばいいんだ勝つんだ」

着物をぬいだのも、髪をといたのも、そうしてここまでそんな姿で走って来たのも、すべては衝動的で少しの根拠もない。