Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ならしげざっぴつ

小出楢重随筆集

小出 楢重

Lisez 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) de 小出 楢重 (こいでならしげ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 334 351 caractères · 657 écrans

Aozora Bunko

これで両眼から公休を要求でもされた日にはまったく心細いと思った。それで私は触覚のことを考えた。一体目のない動物は触覚だけで生きて行くものだが、人間も盲目になると触覚が異様に発達するものだそうだ。

めくらに限らずめあきでも目を瞑ってみると、触覚の世界というものがかなりはっきり考えられるものだ。また触覚を味わったり楽しんだりする時には目は隠居をすることが多い。あるいはまた目で眺めて触覚を強める場合もある。電車の中などでお隣の美人を感じたり味わったりする不良青年は、主として触覚の世界に住む男とみて差し支えない。そんな場合その男の目は知らぬ顔をしてよそを眺めているのが常である。しかし時々は実物を眺めもするものだ。

目下めあきの触覚は知らず知らずの間にいろいろの方面へ働いているもので、その世界はかなり広いらしいが、どうも触覚というものは味覚などよりも少し品格が落ちるように思われる。味覚の方ならば友人や先輩とでも一つの晩餐をともに致しましょうかということもできるが、触覚はどうもそうは行かない。何しろ手ざわりと肌ざわりとかいっただけでもあまり高等な感じはしないものだ。