Classiques japonais avec furigana
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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Lisez 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 159 caractères · 39 écrans
「おい、止そうよ。どうしたというんだい、こりゃア……」
麻布の豆狸というのはあるが、御山内にももんじいが出るという話はまだ聞かない。それにしても朝の五ツ半(九時)、変化の狸のという時刻じゃない。
「嫌だねえ」
ゾクッとして、まとまりのつかない顔で立ち竦んでいると、
「おい、伝兵衛、ここだ、ここだ」
その声は、どうやら、はるか虚空の方から響いて来るようである。
「うへえ」
五、六歩後へ退って、小手をかざして塔の上の方を見上るならば、五重塔の素ッ天辺、緑青のふいた相輪の根元に、青色の角袖の半合羽を着た儒者の質流れのような人物が、左の腕を九輪に絡みつけ、右手には大きな筒眼鏡を持って、閑興清遊の趣でのんびりとあちらこちらの景色を眺めてござる。
総髪の先を切った妙な茶筅髪。
でっくりと小肥りで、ひどく癖のある怒り肩の塩梅。見違えようたって見違えるはずはない、鍋町と背中合せ、神田白壁町の裏長屋に住んでいる一風変った本草、究理の大博士。当節、江戸市中でその名を知らぬものはない、鳩渓、平賀源内先生。
「医書、儒書会読講釈」の看板を掛け、この方の弟子だけでも凡そ二百人。諸家の出入やら究理機械の発明、薬草の採集に火浣布の製造、と寸暇もない。