Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

と竜子は云った。

彼女は順一を抱き取って乳をやった。円く張った真白な乳房が、順一の頬と同じくすべすべした皮膚を、惜しげもなく曝していた。

順造は喫驚して眼を見張った。すぐ自分の側に余りにまざまざと、彼女の存在が感ぜられた。秋子の死から葬式から其後の混雑の間に、順一を介して、彼女はいつのまにか彼と相接して立っていた。彼は適当の視距離を保って彼女を見ることが出来なかった。

大きな澄んだ眼だった。瞳の輝きが目玉の表面に浮いて見え、同情と揶揄との間を一瞬に飛び越し得る眼付だった。鼻が太くがっしりして、薄い唇が少しく反り返っていた。柔かみのある下脹れの頬に、いつも薄く白粉を塗って、大きな束髪に結っていた。若々しさのうちに何処か緊りのない爛熟した肉付で、甘酸っぱい匂い――匂いとも云えないほどの風味が、その全身に漂っていた。凡ての点で清楚だと感じのする秋子とは異って、鈍重なずっしりとした容積だった。

或る大学生と恋してその子を孕みまでしたが、子供が生れると間もなく男に捨てられ、一人で子供を育てていたけれど、どうも先の見込がないので、厄介になってる家――遠い縁故――の主婦さんに勧められて、子供を他家にくれてやり、自分は乳母奉公の決心をしたのだ、というようなことを彼女は語った。