Classiques japonais avec furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lisez 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 195 333 caractères · 385 écrans
二十五
しかし魚は掬えるどころではなかったので、千代子はすぐそれを船頭に返した。船頭は同じ掬網で叔父の命ずるままに何疋でも水から上へ択り出した。僕らは危怪な蛸の単調を破るべく、鶏魚、鱸、黒鯛の変化を喜こんでまた岸に上った。
二十五
僕はその晩一人東京へ帰った。母はみんなに引きとめられて、帰るときには吾一か誰か送って行くという条件の下に、なお二三日鎌倉に留まる事を肯んじた。僕はなぜ母が彼らの勧めるままに、人を好く落ちついているのだろうと、鋭どく磨がれた自分の神経から推して、悠長過ぎる彼女をはがゆく思った。
高木にはそれから以後ついぞ顔を合せた事がなかった。千代子と僕に高木を加えて三つ巴を描いた一種の関係が、それぎり発展しないで、そのうちの劣敗者に当る僕が、あたかも運命の先途を予知したごとき態度で、中途から渦巻の外に逃れたのは、この話を聞くものにとって、定めし不本意であろう。僕自身も幾分か火の手のまだ収まらないうちに、取り急いで纏を撤したような心持がする。と云うと、僕に始からある目論見があって、わざわざ鎌倉へ出かけたとも取れるが、嫉妬心だけあって競争心を有たない僕にも相応の己惚は陰気な暗い胸のどこかで時々ちらちら陽炎ったのである。