Classiques japonais avec furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lisez 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 195 333 caractères · 385 écrans
七
やがて名宛を認め終ると、「ただ通り一遍の文言だけ並べておいたらそれで好いでしょう」と云いながら、手焙の前に翳した手紙を敬太郎に読んで聞かせた。その中には書いた当人の自白したごとく、これといって特別の注意に価する事は少しも出て来なかった。ただこの者は今年大学を卒業したばかりの法学士で、ことによると自分が世話をしなければならない男だから、どうか会って話をしてやってくれとあるだけだった。田口は異存のない敬太郎の顔を見届けた上で、すぐその巻紙をぐるぐると巻いて封筒へ入れた。それからその表へ松本恒三様と大きく書いたなり、わざと封をせずに敬太郎に渡した。敬太郎は真面目になって松本恒三様の五字を眺めたが、肥った締りのない書体で、この人がこんな字を書くかと思うほど拙らしくできていた。
「そう感心していつまでも眺めていちゃあいけない」
「番地が書いてないようですが」
「ああそうか。そいつは私の失念だ」
田口は再び手紙を受け取って、名宛の人の住所と番地を書き入れてくれた。
「さあこれなら好いでしょう。不味くって大きなところは土橋の大寿司流とでも云うのかな。まあ役に立ちさえすればよかろう、我慢なさい」