Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lisez 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 193 050 caractères · 383 écrans
素朴といってもまだ当らない、原始的な肉親的感情といったら、やや正しいのかもしれない。
雨の日、探しあてて、やっとどうやら借りえた家は、崖やぶ斑らな中段に細長く建て並んでいる掘井戸のそばの一軒だった。
長屋の名を「看視長屋」というのは、住んでから後で知った。戸部監獄があったむかし、看視が住んでいた所から起った名だそうである。およそ形容詞は要るまいと思う。
三、四軒先の隣りに、留さんという労働者がいた。引っ越し蕎麦のお礼からすぐ懇意になり、ぼくは留さん夫婦の侠気で、留さんの仕事場へ働きに連れて行ってもらうことになった。
早朝、誘いに来てくれた留さんは、わらじ脚絆に、印絆纒を着、真田紐でしばった大きな弁当箱を肩に掛け、いなせな鳶みたいな恰好していた。ぼくの身仕度にも、ああしろこうしろと世話をやき、自分で買って来た新しい草鞋をぼくの足へ穿かせてくれた。「毎朝だからな、毎朝穿かせちゃ、やれねえぜ。覚えときな、英さん」と、いちど結んだ緒をまた解いて、穿き方を教えてくれた。
仕事場は保土ヶ谷だった。現在の工業地域が、まだ茫々たる野水や見渡す限りな田や草原であった時代である。