Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lisez 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 193 050 caractères · 383 écrans
ぼくらは自分らの家庭に一人の異国人が加わった事に異常な興味と物珍しさを覚えた。可愛がったというよりもオモチャにして歓んだわけかもしれない。マドロス氏の方は、人に馴れない小動物みたいに常におどおどした眼と、作り笑いばかり見せていた。それでもこのマドロス氏は、半年ぐらいぼくらの家にいて、お風呂の水汲みをしたり不器用な手つきで庭を掃いたりしていた。ところが、ある朝、姿が見えなくなってしまった。父の部屋で、母が嘆いている声がしていた。
「……だから私が、云わない事じゃないんですのに」
この朝、会社へ出てゆくときの父の、何ともまずい淋しげな顔つきといったらなかった。
家族以外な食客も常に何人か居た。これは食客とはいえないが、母の実兄で、横浜灯台局の技師として赴任してきた山上清という、ぼくには伯父にあたる人も同居し、まもなくその弟の土木技師の三郎という叔父も来、その上、ぼくの小田原の義兄政広も横浜の左右田銀行へ勤めるようになって、共に住むというような大家内になっていた。
とても、家が狭いというので、遊行坂の道路に面したすぐ近くの借家をべつに借りうけ、食客や伯父たちはみなそっちに雑居し、朝晩の食事はこっちから女中が運ぶという形をとっていた。