Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

Lisez 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 151 280 caractères · 301 écrans

Aozora Bunko

あれ程の用心をしたのだから、復讐鬼がこの山中まで追駈けて来るということは、全く考えなかった。その点はすっかり安心し切っていたのだけれど、それとは別に、広い城郭住いの朝晩、何とはなしに怪談めいたゾクゾクするような雰囲気が、ひしひしと身にせまるのを覚え始めた。

最初それに気附いたのは、五日目の夜更けのことであった。ふと目を覚ますと、どこかでボソボソと人の話声がしていた。天井の高い寒々とした十二畳の座敷、ここには電燈の設備がないので、石油の台ランプを使っているのだが、それも吹き消して寝についた、全くの暗闇である。

一間隔てて老夫婦の部屋があるので、彼らが老の寝覚めの物語でも交しているのかと想像したが、それにしては人声が遠すぎる。しかも二人ではなくて、三人四人の声が入り混っているように思われる。

何町四方人家のない山中、この城郭には自分を混ぜて三人しか人が住んではいないのに、そんな多人数の話声が聞えるというのはただ事でない。幻聴かしら、イヤイヤ、幻聴ではない。確かにどこかこの建物の中の遠くの方で、意味は少しも聞き取れぬが、ボソボソという話声がいつまでも続いている。