Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じょういのかんまん

情意の干満

豊島 与志雄

Lisez 情意の干満 (じょういのかんまん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 599 caractères · 6 écrans

Aozora Bunko

に包まれる。言葉からあらゆる慣習の衣を剥ぎ取り原始的赤裸に還元した意味での、君の「色香」に……。斯く君をのみ想うことを、恋人よ、許し給え。

*

恋人よ、私はいつしか君のことを忘れている……寧ろ、君を取失っている。探せども見廻せども、君の姿は見えない。それを、漸くにして見出した時の、喜びも束の間、おう何と小さく杳かに頼りなげに、君は淡く薄らいでいくことか。思い出は色褪せ、予感はかすみ、君の色香は空焚きの香の薫りにも如かない。君の存在が私にとって、一の力であることに変りはないが、その力も今は、直接君から来るのではなくて、私が君を想うということから来るらしい。十方普遍の存在ではなくて、ただ一人の――可愛い――人間として、君は私の眼に映る。それは私のとぎれとぎれの瞬間を満すだけで、私の心はまた他の方へ向いている。為すべき仕事が多く、考うるべき事柄が多く……私は忙しくて熱に浮かされている。強いて君のことを想えば、何となく心がてれて、気恥しい思いがする。愛に変りはないけれど、愛は今、影のなかに、カーテンの奥に、静かに垂れ籠めている。君よ安らかなれ、と私が斯く遙かに云うのを、恋人よ、許し給え。