Classiques japonais avec furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lisez 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 40 699 caractères · 78 écrans
ていたのだが、狂人になったのでこんなところへ来てはいるけれども、今は気は確かだから心配せずに運命学を覚えておくよう、気が狂い出すと自分は押入れの中へ這入る癖があるから、こうして出て来ている間は大丈夫だと云った。それで由良は気が狂っていくときは自分自身に分るものかどうかと訊き返すと、それは明瞭に分るものだという。狂い出すと今まで身体の中央で振子のように左右に動き続けていた針が、だんだんと振幅を狭めて来て揺れ停り、最後にぴったりと真直ぐに停ってしまうと、もうそれからは身体がきれぎれにひきち切れていくようで、激しい不安に襲われるものだと紳士は云った。由良はこういう狂人になる素質の人物が易断をするのは、常人よりもよく適中するにちがいないと思ったので、あなたの易学は多分自分は常人よりも正確なように思うと云うと、紳士は喜ばしそうに勢い込んでまた易の話をし始めた。彼の云うには、自分の易断はよく適中するので専門の自然科学の方がおろそかになって困るのだが、しかし、自然科学と易学との相違は、神秘を神秘として捨て去るのと、神秘を神秘として取り上げるのとの相違があるだけで、他はどこも変ったところはないのだから、易学は自然科学と争うべきところはその神秘を外にしてはどこ一つとしてないと云った。