Classiques japonais avec furigana
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ゆび
指
佐左木 俊郎
Lisez 指 (ゆび) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 262 caractères · 5 écrans
円タクの行列だ。彼女は急に省線で帰ることにした。円タクをやめて。
省線電車は割に混んでいた。併し彼女はどうにか腰をおろして、その左脇にオペラ・バッグを置くことが出来た。
神田駅に近付いたとき、彼女は、自分の左脇に腰をおろしている男が、顔全体で痛さを堪えながら指先を握っているのに気がついた。その指の間からはだらだらと血が滴っていた。
「まあ! どうなさったんです?」
彼女は、眉を寄せて、自分のハンカチを出してやった。
「あ、済みません。どうも、あの扉で……」
彼は礼を言いながら血に染まった指先をハンカチで包んだ。食指の一節はぐしゃぐしゃに切れて無くなっていた。
「まあ、もげたんで御座いますか。」
「え。あの扉でもって…… 神田ですね。や、どうも……」
男は戸口へ駈けて行った。鰐皮製のオペラ・バッグがその男の席に倒れた。彼女も、それを取って乗り換えのために戸口へ立って行った。エンジン装置の自働開閉扉が、するするっと開いた。
二
彼女は、すっぽんを洗面器に入れて、自分の室に這入って行った。
彼女は洗面器の中の、すっぽんを視詰めながら、首を出すのを待った。