Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 190 406 caractères · 381 écrans
望蜀
「御運を天に祷るほかない。年老ると、禅骨も愚にかえる。寒いのう」
寒いとも思えぬ夜なのに、銀河の空を仰いで、雪斎はつぶやいた。後で思えば、その頃から彼の老病はかなり篤かったのであろう。その夜を最後に、雪斎はふたたび土を踏まなかった。臨済寺中秋寂寞、ひとりの高僧はひそと死んだ。
望蜀
冬が近づいた。
まだ臨済寺の菊は晩節のにおい高く咲いていたが、府中の城下から仰ぐと、眉に迫るほど間近な富嶽は、真っ白な雪になっていた。
「降りろッ」
門前町の辻まで、向う見ずに飛ばして来た一騎の悍馬は、四つ辻の角を固めていた士の長槍で、いきなり脚を払われて、竿立ちになって暴れまわった。
「――あッ」
落馬はしなかったが、鞍上の武士は、抛り出されたように降りて、
「何を召さる」
辻を見まわして、そこらに屯している今川家の士たちへ喰ってかかった。
「止めたのだ。――断りなくどこへ参る」
警固の者は、当然のように云い払う。
「臨済寺へ!」
一方も、昂然と、云い返したが、辻固めの士たちは、
「ならぬ」
と、一蹴した。
「なぜ、ならぬのか」
「臨済寺には、今日、お館様をはじめ、重臣方が、雪斎和尚の忌日とて、御参詣遊ばされておる。