Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 185 353 caractères · 371 écrans
そう思いつめたのだった。
「…………」
藤吉郎も、いつまでも、寧子の頬を抑えていた。じっと見つめた。初めて妻の涙を見たからである。
「馬鹿」
いきなり、もっと深々と、胸の中へ、妻の顔を抱きしめてやってから、彼は、そう云いながら邪けんなように突っ放した。
「――何を泣く。やがて一城の主の夫人ともなる者が、はははは」
大股に、濡縁まで出て、
「ごんぞ居るか。ごんぞ」
若党を呼び立てると、
「はいッ。御用にござりまするか」
ごんぞは、駈け寄って、彼の眼下にひざまずいた。
「この書面を持って、大急ぎで使いいたせ」
もう城内で認めて来たものらしい。懐の中にそれはもう書かれてあった。
「どちらへでござりますか」
「密封ゆえ、宛名は封の下に認しておいたが、海東郡の蜂須賀村までだ」
「蜂須賀村へ」
「小六殿の屋敷をおまえ知らないか。土豪の小六殿だ」
「あの、野武士の……」
「うかとでも、失礼な言辞あってはならぬぞ。わしが今、御城内から乗って来た馬が門辺に繋いであろう。それへ跨がり、直ぐ飛んで行って来い」
「はッ。心得ました」
「御返辞は、城内へ持って参れよ。もう家にはおらぬから――」
その晩は、すでに武装し、藤吉郎は、城内に詰めていた。