Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 185 353 caractères · 371 écrans

Aozora Bunko

道安は、新左の汲んでくれた白湯の茶碗を掌に抱きながら、夕迫る空をながめていた。

「堺の町の運命も、どうなるやら知れぬというのに、わしの父も父だが、曾呂利どのも、相変らずだの。なぜ、逃げぬのじゃ」

「なぜというたとて、仕事を捨てて、逃げられようか」

「戦争が襲って来るんだよ、戦争が」

「わかっているが、あいにくと、塗りかけている筥ものや棗などが溜っている」

「そんなもの、この町が、戦争となったら、どうなるものか」

「でも、田舎へ逃げて、お百姓の穀を喰いつぶしているよりはましじゃろが」

「茶事につかう棗など仕上げたところで、こんな際では、取りに来る客もあるまい」

「あってもなくても、わしらは、仕事に向って坐っているのが天職じゃ。そのうちに世間のほうで、自然ぐるりと一廻りして、店の前にも、客の来る日がやって来ようで」

「ははは」

道安は笑ったが、笑っていられない父の身を思い出して、

「こうしてはいられない」

と、茶碗を返した。

新左は、彼の落着かない様子をながめて、

「宗易様を、何でそのように、眼いろを変えて探してござるのじゃ」

「さっきも話したとおり、この物騒な時も時、こん夜、茶事をなさると仰っしゃって、十人衆のお仲間を招いてあるに――ぶらりと、裏庭から何処ぞへ出て行かれたまま、もう夕方にも近いのにお帰りがない。