Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 200 320 caractères · 398 écrans

Aozora Bunko

彼の全軍が、甲府を出る朝の町々は、この盆地の城府がひらかれて以来の賑いだった。

いかに新羅三郎以来の家武田氏が、ひと頃の隆盛を極めた文化があった所にせよ、中央の精兵と衛軍の豪美荘重な粧いにはくらべようもない。かの馬揃えの天覧に、御簾のあたりの月卿雲客を驚嘆させ、三十余万の民衆の眼を奪った絢爛に劣らない曠のいでたちが、この日も、信長とその前後の諸大将旗本をつつんでいた。

後漢のむかし、魏の曹操が、西涼軍の北夷の兵が自分らの行装に、おどろきの眼をみはって、指さし囁きあうのを見て、馬の上から、

(おまえ達は、何を驚き珍しがっているのか。この曹操とて、目はふたつ、鼻はひとつ、人並と何のかわりもない。変っているのは、知識深謀の才だけだ)

と、未開の西涼勢をからかいながら通ったというが、きょうの信長の面上にも、沿道の民衆にたいして、ややそれと似たような得意さがうかがわれた。

五彩の霧が行くように、旌旗の列は、笛吹川にそうて下る。

やがて、川を越えて、蛯口。――町屋はみな商いを休み、道を浄め、砂を掃き、領民はみな香を焚かんばかりに軒下につつしんで出迎えた。そしてここには徳川家の武士が大勢出て、警固や、接待の事にあたっていた。