Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 200 320 caractères · 398 écrans
鴉を喰ったことはたいへんな数で、その鴉さえほとんど手に入るのが稀れになったほどである。
――がさっと、何か暗闇のなかで、鼬の駈けるような物音がしても、哨兵はすぐ、眼をひからせた。本能的に胃が胃液を滲出するため、その後では、きっと、
「腹が絞られるように痛い」
と顔をしかめ合うのだった。
その晩は、月がよかった。だが、城兵は、
「ああ。――月は喰えない」
と喞った。
見張っている寨や、城門の屋根に、わらわらと、落葉がこぼれてくる。ひとりの兵は、むしゃむしゃと紅葉を喰っていた。
「うまいか」
ひとりの哨兵が聞くと、
「藁よりはましだよ」
と、また一つかみ拾って喰う。
だが、忽ち、こそばゆくなったとみえ、しきりに咳をして、喰っただけの紅葉を吐き出していた。
「……あッ、御家老が」
誰か、突然、呟くと、みな気を緊め直して、槍の穂へ、確と、意志を示し直していた。――ひた、ひたと、ただ一人で、灯の気のない本丸のほうから歩いて来る人影がある。別所家の家老、後藤将監基国であった。
「やあ、大儀だのう。ご苦労だのう。何も変ったことはないか」
「べっして異状はございません」
「そうか……」