Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 180 256 caractères · 361 écrans
やがて――眼で見て初めて、穴蔵みたいに、昼間でも暗いわが家の奥をおえつと共に覗きこんだ。
用達にでも出ているのか、筑阿弥は留守だった。おえつの話を聞いて、母は、
「困った子よのう」
と、つくづく溜息をついて、日吉の暢気顔をながめたが、その眼は、彼を責めているのでなく、二年近くも見なかった間に、めっきり大きくなった子の姿に、気をとられている様子でしかなかった。
日吉はまた、母の乳ぶさに吸いついている乳のみ児に、怪訝るような眼をすえていた。いつの間にか、自分の家にまた一人子が殖えていたのだ。彼はいきなり、その子の顔を持って、乳くびからぎ離してのぞき込んだ。
「おっ母、いつ生れたの、この子」
「おまえは、兄さんになったんだよ。慥りしなければいけませんよ」
「なんてえ名?」
「小竹」
「変な名だな」
頓狂な声でいったが、しかし彼は痛切に、何か感じたらしかった。弟というものに押し出された兄の意識だった。
「あしたから、おらが負ってやろうね。ええ小竹や小竹や」
余り彼がいじくったので、小竹は泣き出した。
おえつが帰って行くと、入れちがいに義父の筑阿弥がもどって来た。母がさっき妹のおえつに愚痴をこぼしていたのによると、筑阿弥はこの頃、貧乏の立て直しにくたびれて、酒ばかり飲んでいるとのことだったが、今も赤い顔して家にはいって来た。