Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
それは絶えず千鶴子の家へ自分の両親の頭を下げさせることであった。
「洋行から帰ると、その晩はホテルで泊る方が良いというが――」
と、こういう心配と小さな誇りを持っている父に、頭をいつも下げさせてゆく子供に自分がなることは、いわば、洋行したためばかりに起って来た悲劇であった。船で日本を離れ始めてからは、乗客たちの身分とか、財産とか、名誉とかいうものの一切は、人の頭から吹き飛んだ平等対等の旅人となっていられた。しかし、その習慣も、帰れば誰に命ぜられたものでもなく、忽ちこのような、かき消えた自然さで再びもとのわが身に還った落ちつきである。とはいえ、実はそれも自分の身分を考えず、頂きの高さで人と平等に眠っていた身が、眼を醒すと同時に、下まで墜落して行く狂めくような呆然たる静けさに、それは似たものだった。こんなことは矢代もみな想像していたことだったが、しかし、それがこれほど早く前の自分の姿を見る寂しさに変ろうとは。――
「君、日本へ帰れば、もう君と千鶴子さんとは会わないにちがいないよ。だから今のうちさ。」
こんなに久慈が彼に奨めた日のことなども、矢代は思い出した。