Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lisez 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 169 810 caractères · 345 écrans

Aozora Bunko

水平線は漠として見えない。あそこらが東シナ海になるのだ。

しんとしている。

いや、しんしんと、耳鳴りがしている。

鴉の声、トラックの振動音、それから一挙に解放され、耳がバカになったようだ。砂浜は大きく彎曲して凹んでいる。海が長年かかって、浸蝕したのである。今眺める海は静かだが、石垣島あたりで発生した台風が、枕崎や佐多岬に上陸して荒れ狂い、鹿児島から北上する。そんな時に吹上浜の浪は砂丘まで襲いかかり、砂をごっそり持って行くのだ。五郎は戦争中、坊津に行く前に、吹上浜の基地を転々とした。それでこの海のこわさは知っている。

「隠密だの、密航者だのと――」

呟きながら立ち上る。

「おれもちょっと甘ったれているな」

波打際に出て、五郎は靴を脱いだ。靴と弁当を振り分けにして肩にかけ、ズボンをまくり上げる。サイダー瓶を下げたまま、海の中に歩み入る。脛までひたして、がばがばと歩き廻り、また波打際にとって返す。波打際で海に向って立っていると、波が静かに押し寄せて来て、蹠や踵の下の砂をすこしずつ攫って行く。このくすぐったい感じは、何年ぶりのものだろう。

五郎は北に向って歩き出した。