Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lisez 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 169 810 caractères · 345 écrans

Aozora Bunko

建前の日に招待された。そこで小城の妻の顔を見た。紫の袴を見てから、二十年も経つ。へんてつもない中年の女で、五郎にはもう興味がなかった。それよりも建前の行事、夕暮の空に立つ柱や梁、その下で汲合う冷酒やかんたんな肴、大工の話などの方が面白かった。この日以後、彼は小城と顔を合わせたことがない。

それから数年後、小城はある若い女が好きになった。ある進歩的な出版社から発行される雑誌の編集部につとめる女だ。その女といっしょになるために、小城は妻を捨てた。その話を彼は三田村から聞いた。

「そういう男なんだ。あいつは!」

三田村ははき捨てるように言った。

「あいつは損得になると、損の方を平気で捨ててしまうんだ。エゴイストだね」

五郎は何となく、向日葵の方に歩いていた。向日葵は盛りが過ぎて、花びらが後退し、種子のかたまりが、妊婦の腹のようにせり出している。美しい感じ、炎えている感じは、もうなくなっていた。

「何が何でも!」

終末的な力みだけで、枝が花を支えているように見えた。

宿に戻った。番頭らしい男はさっきと同じ表情で、五郎を出迎えた。女中が案内した部屋は、貧しくよごれている。