Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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たなださいばんちょうのかいし

橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇

橘 外男

Lisez 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 112 181 caractères · 219 écrans

Aozora Bunko

馬を並べて下った四里の道を、今度は逆に東水の尾へ登っていったのです。

この前のとおり、大野木を出端れるともう、人っ子一人の姿も眼に入りません。登るに従ってやがて車の左側に、例の混凝土の溝渠が蜿蜒と列なっているのが見えます。山の陰に隠れたり、また姿を現したり、さらに半道ばかりもいったところで、道は一町ばかりこの溝渠と並行して走ります。そして一段低く、溝渠の中は、車窓から見下ろせます。

おや! と私は眼を瞠りました。この前三人で水遊びをしたのは、六月の始め頃、飛沫を浴びるとまだ鳥肌だつ頃だったのです。今は七月も過ぎて八月の五日……茹るような暑さです。溝渠はさぞ満々たる水を湛えて走っていると思いのほか、なんと一滴の水もなく、カラカラに乾き切って混凝土の底は、灰色の地肌を見せているのです。しかも底には処々黒い土がこびりついて、そこには雑草が生い茂っているのです。ということは、ここ半年にも一年にも、水なぞは一滴も通ったことがないという証拠です。どうしたんだろう? と私は名状し難い不思議な気持に打たれました。

溝渠はまた道から離れて、やがて山の向うに入ってしまいました。