Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lisez 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 023 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

当時、三十歳だった正隆は、ようよう光明に向って踏み出した生活の三足目で、自分を粉砕する襲撃を予期してはいなかった。予期出来なかったほど、正隆は、或る点からいえば正直になっていたのである。

自信ある競技者のみが感じ得る楽しい、光輝ある緊張の連続で、いよいよ結果の発表されるべき日が来た。

その日の帰途を想って、自ら微笑を禁じ得ないような心持になりながら、出勤した正隆は、自分の机に坐るか坐らないかに、課長室へ呼ばれた。彼は、勿論何の不安をも感じなかった。至極落付いていた。が、その落付いた、もう解りきっているという平気さの下に、嘘のいえない心臓を率直に鼓動させながら、正隆は厚い木の扉を開いて、半白の課長の面前に現れたのである。

「まあ、そこへでもおかけ下さい」

機嫌のいい声で、朝の挨拶をして正隆に、傍の椅子を勧めると、課長は、暫く何か決心のつきかねた風で、頬杖を突いた片手を延して机の上を叩いていたが、いきなりその顔を挙げると、

「いや、どうもあの翻訳はお世話でした」

と云いながら、一寸頭を下げた。

これは、唐突である。正隆は一寸返事を見出せないで次の言葉を待った。