Classiques japonais avec furigana
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うりのなみだ
瓜の涙
泉 鏡花
Lisez 瓜の涙 (うりのなみだ) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 247 caractères · 21 écrans
その袂にも桜が充ちた。
しばらく、青麦の畠になって、紫雲英で輪取る。畔づたいに廻りながら、やがて端へ出て、横向に桃を見ると、その樹のあたりから路が坂に低くなる、両方は、飛々差覗く、小屋、藁屋を、屋根から埋むばかり底広がりに奥を蔽うて、見尽されない桜であった。
余りの思いがけなさに、渠は寂然たる春昼をただ一人、花に吸われて消えそうに立った。
その日は、何事もなかった――もとの墓地を抜けて帰った――ものに憑かれたようになって、夜はおなじ景色を夢に視た。夢には、桜は、しかし桃の梢に、妙見宮の棟下りに晃々と明星が輝いたのである。
翌日も、翌日も……行ってその三度の時、寺の垣を、例の人里へ出ると斉しく、桃の枝を黒髪に、花菜を褄にして立った、世にも美しい娘を見た。
十六七の、瓜実顔の色の白いのが、おさげとかいう、うしろへさげ髪にした濃い艶のある房りした、その黒髪の鬢が、わざとならずふっくりして、優しい眉の、目の涼しい、引しめた唇の、やや寂しいのが品がよく、鼻筋が忘れたように隆い。
縞目は、よく分らぬ、矢絣ではあるまい、濃い藤色の腰に、赤い帯を胸高にした、とばかりで袖を覚えぬ、筒袖だったか、振袖だったか、ものに隠れたのであろう。