Classiques japonais avec furigana
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たざきそううんとそのこ
田崎草雲とその子
吉川 英治
Lisez 田崎草雲とその子 (たざきそううんとそのこ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 568 caractères · 40 écrans
梅渓餓鬼草紙の中に住む 一九先生に会うの機縁
梅渓餓鬼草紙の中に住む
一九先生に会うの機縁
山谷堀の船宿、角中の亭主は、狂歌や戯作などやって、ちっとばかり筆が立つ。号を十字舎三九といっていたが、後に、十返舎一九と改めて、例の膝栗毛を世間に出した。
それが馬鹿な売れ行きをみせて、馬琴物も種彦物も影をひそめてしまったので、一九は、すっかりいい気持だった。
待乳山が近い二階の北窓に、文人ごのみの机をすえて、よく鼻毛など抜いていたが、この頃、毎日のように、ぴイぴイ泣く、近所の子供の声が、神経にさわってならないので、女房が上ってきた所を、いきなり呶鳴りつけた。
『てめえの耳は、ぬか袋か。あれが気にならねえのかよ。なんでえ、あの餓鬼ゃあ、きのうも今日も、まんまー、まんまー、と雨垂れみてえに、朝から晩まで、泣きいびってやがる。なんとかして来い』
『よその子を、どうなるものかね。それに、御浪人じゃないか。うっかりした事を、いえやしない』
ふくれながら、女房は、外へ出て行ったが、戻ってくると、慌てて、大きな塩握飯を二つこしらえて、前掛の下に、小皿を隠して出て行った。
ひどい裏店で、一軒一軒が生ける餓鬼草紙の絵だった。