Classiques japonais avec furigana
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わたしのこうりしょうどう
私の小売商道
相馬 愛蔵
Lisez 私の小売商道 (わたしのこうりしょうどう) de 相馬 愛蔵 (そうまあいぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 160 396 caractères · 312 écrans
しかしその得意に向って、一応詳しくその事情を陳じ、それでも先方が商人の損耗を省みない時は、泣く泣くその品を引取らねばならないのである。自分はこのような得意を捨てるに弊履の如くあれと店員に命じておくのである。
ある有名な富豪を得意とし、いわゆるお出入り商人の仲間となったことあり、月々数円以上の御用命は、パン店としては上等の客筋といわねばならぬのであった。しかるに何故か店員はこのお屋敷に御用伺いに出ることを好まない。先方よりは電話で御催促があるので、やむを得ず渋々と出て行くというふうである。自分はこれが不思議でならないので、小僧頭を呼んでそのわけを詰問して見たが、答は左の如くであった。我等小僧としてたびたび主人の厳命にそむき、またお得意に対してしばしば間を欠き、不便をかけて申し訳がございませんが、実はあのお屋敷によって毎朝その日その日の御用を伺いますのに、非常に手間がかかって困るのでございます。まず係の勝手女中より中働きに達し、奥女中を経てお上(近来俄分限や勿体ぶる官吏の家庭にては女中や下男をして御前あるいはお上と呼ばせる)に御用を伺って来るために、早くも三四十分、おそい時は一時間ないし一時間半待たされる、しかし多少とも御用のある時はよろしゅうございますが、待った上でないといわれた時は実に泣きたくなります。