Classiques japonais avec furigana
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しゅうふうふき
秋風不帰
山本 周五郎
Lisez 秋風不帰 (しゅうふうふき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 593 caractères · 28 écrans
「拙者の眼違いかも知れぬが、さっき欣弥と一緒に来ていたのは、若林の妹ではないか」
「……そうだ」
吉郎兵衛は眼を外そうとした。
「矢張り、そうだったのか、……まさかという気もしたが、……そうか」
「しかし狩谷、これは他に仕様のない……」
「いや分ってる!」
夏雄は、さすがに寂しさを隠しきれぬ調子で遮った。
「考えてみれば当然だ、拙者はこういう身上になったのだから、もう約束を果すことは出来ないし、許嫁を反古にしなければ若林兄弟も安全ではいられないだろう、……だが、なんだか拙者は、待っていてくれそうな気がした」
「……分るよ、狩谷」
「善之助とは莫逆だったし、……あの女の気持も多少は知っていたと思った、……それで少し意外だったのだ、殊に相手が……小野国老の伜とは」
吉郎兵衛は答える言葉に窮した。
「愚痴だな、はははは」
夏雄は空しく笑って、
「しかしここへ来たお蔭で知ることが出来た。知らずに会ったら善之助を困らせることになったろう、拙者もこれで身が軽くなったよ」
そう云って静かに障子をあけた。
隣屋敷から、さびのある声で「鉢の木」を謡いだすのが聞えた。……夏雄は庭に下り、よろっとしたかたちのまま、棒を呑んだようにそこへ立ち竦んだ。