Classiques japonais avec furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Lisez 菊千代抄 (きくちよしょう) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 178 caractères · 72 écrans
三
それからおよそ二年くらいのあいだ、菊千代の半三郎に対する感情は絶えず動揺し、一日じゅう側にひきつけて置くかと思うと、三日も四日も顔を見たくない、声も聞きたくない、わざと彼の見ている前でほかの者と親しくしてみせたり叱りつけたりする。自分でも理由はわからないのだがそんなふうな気分のむらが常に起伏を続けた。
三
十五歳の年の晩秋のことである。
中屋敷から馬で、向島、亀戸天神をまわって、下屋敷まで遠乗りが許された。距離はさしたることはない、遠乗りなどというほどのものではないが、屋敷から外へ出ることが珍しく、勇み立ってでかけた。先登が和島という中老の侍、菊千代のうしろに竹中春岳という馬術の師範が続き、そのあとに学友が五人、むろんそのなかには半三郎もいた。
向島の木母寺で休息し、命じてあったとみえる茶菓をたべて出た。そこから小梅を通って亀戸へ向ったのだが、枯野道へかかったとき、右側にある田川の枯芦の繁みから、鼬とも河獺ともみえるかなり大きな毛物が、とつぜんとびだして来て道を横切った。これに驚いたのだろう、先登の和島の馬が高く嘶いて棒立ちになった。和島は巧みに手綱を捌いて乗り鎮めたが、すぐうしろにいた菊千代の馬はもっと驚愕し、大きく跳躍すると、和島の馬の脇をすりぬけて、狂ったように疾走し始めた。