Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Lisez 菊千代抄 (きくちよしょう) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 178 caractères · 72 écrans
四
そうわかっていて、しかしどうにも云いだすことができなかった。
「――お屋敷は近うございます、およろしければ御駕を命じましょう、……お顔色が悪うございますから、そう致すほうが」
「いや大丈夫だ、もうすぐ治る」
菊千代はこう云って眼をつむった。どうやら嘔きけはおさまったが、腰から大腿部へかけて、骨がだるいような痛いような、重苦しいいやな気持である。
――馬が疾走したとき、どこか痛めたのではないか。
ふとそんな疑いが起こった。気がついてみると腹のあたりも痛いようだ、そのうえ全身がわけもなくだるい。菊千代は急に不安になり、苛々した声で「帰る――」と云うと、立って大股に馬のほうへいった。うしろで半三郎があっといった。ごく低い、殆んど息の音だけであったが、神経が過敏になっているので、菊千代はそれを聞きのがさなかった。おそらく失禁の汚れをみつけたのであろう、だが菊千代はもうそれには構わず、怒ったような歩きぶりでいって、師範の介添する馬へ乗り、和島の先登で下屋敷へ向った。
四
それからまる十日のあいだ、菊千代は寝間にこもりきりで誰にも会わなかった。父がみまいに来たときも、父をさえ寝間へ入れなかった。