Classiques japonais avec furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Lisez 菊千代抄 (きくちよしょう) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 178 caractères · 72 écrans
椙村半三郎はもう十八歳で、むろん元服しているし、長身の痩形ではあるが、骨組の逞しい凛とした青年になっていた。僅かに数カ月会わなかっただけであるが、菊千代には見ちがえるような感じだった。躰格に比べてやや小さい頭部の、ひき緊ったおもながな顔に、濃い眉と相変らず濡れたように赤い唇とが眼をひく。……菊千代はいきなり彼の胸へとびつきたいような衝動にかられた。殆んど身が浮きそうになった。しかしそれはたちまち激しい憎悪に変り、膝の上の手が震えだした。
「今日はききたいことがあって呼んだのだ、いらぬことは申すには及ばない。みがきくことに返辞だけすればよい」
菊千代はできるだけ冷やかにいった。
「そのほう菊千代が男であるか、女であるか知っているであろうな」
「――おそれながら」
「返辞だけ申せ、知っているかどうか」
半三郎は両手をついたまま黙っていた。この部屋へはいってから、彼はまだいちどもこちらを見ない。蒼いほど澄んだ白皙の面を伏せ、なにかを耐え忍ぶとでもいうように、固く口をひきむすんでいた。
「返辞をせぬか、半三郎」菊千代は震えながら叫んだ、「――そのほう菊千代を若年とみてあなどるのか」