Classiques japonais avec furigana
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とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
Lisez 藤九郎の島 (とうくろうのしま) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 765 caractères · 19 écrans
二
意見はまちまちで、容易にきまらない。神鬮をとってきめようということになって、鬮をとると、上陸せよと出た。みなその気になって、さっそく支度にかかり、わずかばかりの粮米と鍋釜、手廻りの道具を入れた木箱一つ、斧一梃を持って小舟に移り、渚をさがして、そこから島にあがった。これが二十一年という長い滞在のはじまりになろうとは、誰一人知るよしもなかったのである。
二
島根にとりついてみると、沖から眺めたよりもいっそうすさまじい岩島であった。岩壁のところどころに谷間が暗い影をしずめ、噴火で押しだされた軽石が、雨風に晒されて白骨のように落々と散らばっている。話に聞く賽ノ河原とは、こうもあろうかというようなあさましい風景であった。島周りは、一里ほどもあるふうだったが、断崖の入江にさえぎられて廻ってみることが出来なかった。なによりまず飲み水のことだと、十二人で手分けして焼け山の中段まで探しまわったが、川泉はおろか溜り水すらない。船から見て、おおよその見当はつけていたが、草木のともしいことはおどろくばかり、木と名のつくものは、国方で、菜萸といっているものの一尺ほどの細木、草はといえば、茅、葭、山菅が少々、渚に近いところに鋸芝がひとつまみほど生えているだけであった。