Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
きんろう
金狼
久生 十蘭
Lisez 金狼 (きんろう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 89 438 caractères · 179 écrans
二日目の昼には、強制的に検黴された。もし病毒でももっていたら、その点で有無をいわせないつもりらしかった。警察医が指にゴムのサックをはめて、葵の肉体を調べた。
結果は思いのほかよかった。警察医は妙な笑いかたをしながら、君、あいつは処女だぜ、といった。これが係官の心証をよくした。
できるなら、葵はなにもかも告白して、ここから逃げだしたいと思った。こころがなげやりで、この世の幸福などは、すっかりあきらめていた今迄の葵ならば、たぶん、そうしたであろう。しかしいまは違う。久我の優しい眼ざしを透して、その奥に、おぼろげながら、幸福な自分の未来を見いだしているのだった。二十三年の半生を通じて、いま、ようやく葵は幸福になろうとしている。この夢だけは失いたくないのだった。
検黴室の鉄の寝台にねかされたとき、葵は憤りと悲しみで心がさし貫かれるような気がした。このときばかりは、さすがになにもかも告白しようと思った。それさえすれば、この恥辱は受けないですむのだ。だが、それをいえば、葵はもう終生久我に逢うことが出来ないであろう。久我への劇しい愛情が、この屈辱に甘んじさせた。