Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きんろう

金狼

久生 十蘭

Lisez 金狼 (きんろう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 89 438 caractères · 179 écrans

Aozora Bunko

3

3

人影のない長い廊下には、警察署特有の甘い尿の臭が漂っていた。喰い荒した丼や箱弁の殻がいくつも投げだされていて、そのうえを蠅が飛びまわっていた。遠くで、劇しく撃ちあう竹刀の音がしていた。〈司法主任〉という標札のかかった扉があいて、分厚な書類の綴込をかかえた丸腰の巡査のあとから、葵がそろそろと出てきて、窓ぎわのベンチへ腰をおろした。

面やつれがして、まるで違うひとのように見えた。服は寝皺でよれよれになり、背中に大きな汗の汚点をつくっていた。首すじや手の甲はいちめんに、南京虫にやられた、ぞっとするような赤い斑点で蔽われていた。

巡査がつぎの扉へきえると、葵はぼんやりした眼つきで窓のそとを眺めながら、無意識のようにぽりぽりと手の甲を掻きはじめた。

窓のそとは空地になっていて、烈しい陽ざしの下で、砂利が白くきらめいていた。

葵は急に眼をとじた。瞼のあいだから涙が流れだしてきた。泣いているのではない。烈しい光が睡眠不足の眼を刺激したのだ。

葵は三日目にようやく留置をとかれた。極度の疲労と緊張のあとの麻痺状態が頭を無感覚にして、なにも考えることが出来なかった。