Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
いさん
銀座復興 他三篇
水上 滝太郎
Lisez 銀座復興 他三篇 (いさん) de 水上 滝太郎 (みなかみたきたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 40 579 caractères · 82 écrans
おときは新吉の指さす樹の枝に、可愛らしい小鳥の姿を見つけた時などは、声をあげて喜んだ。そういう事に喜ぶ自分というものを初めて知った。自分が喜べば、夫が満足する事も一層嬉しかった。全く今まで知らなかった興味が、野原にも藪の中にもある事がわかった。
けれどもおときが弱ったのは虫の多い事だった。蚊帳の用意がなかったので、十月のなかばまで難渋した。蚊ばかりではない。名も知らない虫が、あかりを慕って来る。蝶々蛾の類に属するもの、うんか、かまきり、金ぶんぶんなどはおときの顔にぶつかったり、髪にとまる事もあった。仰山な声を立て顔色を変て逃廻ったが、新吉は平気で指でつまんで縁側から捨てた。彼は決して殺さなかった。
「虫なんてそんなに怖いものじゃあない。よく見てごらん。みんな素晴しく巧妙に出来ている。僕なんか、可愛らしくて堪らないな。小鳥だの金魚だの、ああいうものを可愛がるのと同じように、こんなちいさな虫も可愛らしいと思う。」
そう云って、吹けば飛ぶような虫を手の平に乗せて、長い間見ている事もあった。羽を微妙に震わせたり、脚を擦合せたり、目玉をくるくる動かしているのを、新吉はおときにも見せて面白がった。