Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
Lisez 陰獣 (いんじゅう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 66 968 caractères · 131 écrans
彼女はなぜ長年つれ添った夫を殺す気になったのであろう。自由か、財産か、そんなものが一人の女を殺人罪に陥れる程の力を持っていただろうか。それは恋ではなかったか。そして、その恋人というのは外ならぬ私ではなかったか。
アア、私はこの世にも恐ろしい疑惑をどうしたらよいのであろう。静子が殺人者であったにしろなかったにしろ、私はあれ程私を恋慕っていた可哀相な女を殺してしまったのだ。私は私のけちな道義の念を呪わずにはいられない。世に恋程強く美しいものがあろうか。私はその清く美しい恋を、道学者の様なかたくなな心で、無残にもうちくだいてしまったのではないか。
だが若し彼女が私の想像した通り大江春泥その人であって、あの恐ろしい殺人罪を犯したのであれば、私はまだいくらか安んずるところがある。とは云え、今となって、それがどうして確められるのだ。小山田六郎氏は死んでしまった。小山田静子も死んでしまった。そして、大江春泥は永久にこの世から消去ってしまったとしか考えられぬではないか。本田は静子が春泥の細君に似ていると云った。だが似ているという丈けでそれが何の証拠になるのだ。私は幾度も糸崎検事を訪ねて、その後の経過を聞いて見たけれど、彼はいつも曖昧な返事をするばかりで、大江春泥捜索の見込みがついているとも見えぬ。