Classiques japonais avec furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lisez 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 213 575 caractères · 424 écrans
頼朝は命じて、その子を、由比ヶ浜に投げ捨てさせる。――という史実はあきらかなのだ。ところで、吾妻鏡による出産日から、逆算して、彼女の受胎日のころを考察してみると、二人が吉野山に隠れていた七日間以外には、その契りのあった機会は考えられないのである。――ということなど思いやると、道ばたの葛の花までが、悲調な恋愛詩の栞かのように可憐である。山道を苦にもせぬ香屋子はそれを手に摘んでは先を歩き、八十五歳の土地の古老、辰巳長楽老も、じつに元気で、終始、私たちの先達となって、史蹟の解説にあたってくれた。
芝居の義経千本桜では、いちめんの花の舞台で幕があくが、史実上の二人の吉野籠りは、冬だった。おそらく全山四岳、雪だったろう。車で下市へ下り、谷崎氏の“吉野葛”にも見える弥助鮨の楼上に休んで鮎ずしを食う。奈良では、薬師寺の塔を見に詣る。前日、寺のあるじの橋本凝胤師を夢声老が訪ねて、二度目の問答有用が行われたと聞いて、戯れに、
薬師寺や今日は問答無用也
などと駄句りつつ塔前に立つ。和尚は知らず、塔はいつ見ても、見とれるばかりいい塔なり。
句は、雑俳にもなっていない駄句ですゾと、辺りの群ら雀と一しょになって嘲る社のH君に、これなら君の鉄道唱歌調よりましだろうと、もう一句ムリにひねって示す。