Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しもばしら

霜柱

山本 周五郎

Lisez 霜柱 (しもばしら) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 328 caractères · 29 écrans

Aozora Bunko

上からおりて来る者があった。

――義十郎か。

そう思ったのだが、霧の中をおりて来たのは繁野兵庫であった。喜兵衛は口をあき、兵庫がよろめくのを茫然と眺めていた。極めて短い時間だったろうが、兵庫の姿が夢の中で見る人のように感じられたのである。――だがすぐに、喜兵衛はそっちへ駆け登った。霜柱のために滑って膝を突き、立ちあがってまた膝を突き、両手も泥まみれになった。

兵庫は彼の見ている前で倒れ、低い呻き声をもらした。二十尺にも足りない距離を、喜兵衛は泥まみれになりながら、殆んど這うようにして登った。

「御家老」と彼は喘ぎ喘ぎ、兵庫を覗きこんで呼びかけた、「どうなさいました、御家老」

「済ませて来た」と兵庫が歯と歯のあいだから云った、「おれは自分の手でやりたかった、人の手に掛けたくはなかったのだ」

喜兵衛はぎゅっと顔をしかめた。兵庫の躯から血の匂いがたち、見ると、脇腹を押えている手が赤く染まっていた。

「傷をみましょう」と喜兵衛が云った。

「大丈夫、深手ではない」と兵庫がしっかりした声で云った、「あの臆病者は、霧の中からとびだして来て、いきなり刺した、深くはない、急所も外れている、――ばかなやつが、おれだとわかったら、ふるえだして、人違いだと云った」