Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
だが、どうもそれ以来、人を見るとびっくりしていけない」
小鳥の声が朗らかだ。
薬研の音が面白い、医者はのんきな商売だとは、平賀源内、思っていない。
「一体おれが物好き過ぎる……」反省心が出てきたらしい。
「何も好んで、常木鴻山などと一緒に、ぬきや屋敷に潜っていることはなかったのさ。ここにこうして、百姓家の一間を借りて、小遣い取りの病人も来るのだから、おとなしく、異人墓の文字でも写して勉強しておりゃいいことさ。だがどうしたろう鴻山は? 舟で逃げたから捕りはしまい、紀州の奥でも隠れたかな、何しろおれは迷惑した。もう、天満浪人だの隠密だの、蜂須賀家だのッて、そんな物騒な渦の中へは飛び込むまいぞ。そうともそうとも、早く一つエレキテルや火浣布でも仕上げて、大金儲けをしなくっちゃ……」
動悸がやむと、大分考え方が明るくなる。
その時、門垣根の外から、妙な尺八の音が静かに訪れてきた。
尺八の呂々はいつまでも門を立ち去らない。
源内は、耳うるさくなったように、薬研の手も止めずに、
「お通ンなさい」と断った。
在方を徘徊する悪い虚無僧の中には、断れば断るほど下手な尺八を吹き立てて、揚句の果てには強請りだすような者もあるが、今のは源内の一言でピッタリ止んだ。