Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
舞い納めて、阿波守がこういうと、
「はっ」天堂一角の答えがして、
「俵一八郎をここに召し連れました」
「ウム、早かった」
強くうなずいて、さて、大きく、
「あらぬ疑惑をもって当家の内秘を覗かんとする天満の痩浪人、船出の別宴によい肴じゃ、重喜がみずから血祭りにしてくりょう! 女中ども、誰かある! 佩刀を取れ」
と、居流れた侍女たちを、鋭い眼で見廻した。
「お佩刀」
すぐに小姓が差し出すのを、
「ウム」と左手へ引っ提げた重喜。「その燭台を廊下へ出して、女どもも余が血祭りを見物せい!」
自慢の銘刀、ほたる斬り信国の柄に手をかけてギラリと抜く。
「阿波殿、少し酔ってまいられたかな?」と三位有村は、腑に落ちない顔をして小鼓を片寄せたが、ほかの三卿は、血を見ることを珍しげに端近く褥を進めた。
女中たちは命じられたまま、燭台の幾つかを廊下へ出して花のごとく居流れたものの、一脈の殺気、殿の眉宇から流れて、なんとなく恐ろしい。
「こやつか、血祭りの生贄は!」
鳴門舞の謡声より、なお太やかな音声をして、阿波守重喜ハッタと庭面を睨みすえた。
そこには憔悴した俵同心、一角に縄尻をとられて控えている。