Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
およそ、一国の民心に彫りつけられた程の怨みは、必ずその子に伝え、その孫に語られ、報復の遂げられるまで、世々、代々忘れぬものだ。ましてや、一代の英君と仰いでいた義伝公を、徳川家の詭策に害せられた阿波の怨みというものは、弓取の子孫は無論、半農半武家の原士の胆にも銘じ、野に働く藍取り唄にも現れたろう。
してみると、阿波の反徳川思想は、今日や昨日のことでなく、永い歴史と根深い宿怨のある所。
それかあらぬか、蜂須賀の子女は、当時すこぶる貧乏で幕府からは好まれぬ公卿堂上へ多く嫁いでいる。重喜のすぐ先代をみても、一女は花山院大納言の正室に、また鷹司家、醍醐大納言、中院中将などとも浅からぬ姻戚の仲であった。
そこへ宝暦の気運が芽ざし、尊王皇学の風が起り、倒幕の風雲がわずかながら動いてきた。
公卿縉紳と密接な結びがあり、しかも如上の歴史をもつ蜂須賀家が、その裏面に策動するのは、あまり、当然すぎるほど当然なこと。
今――菊の間の話をきき、それやこれを思い合せて、法月弦之丞、思わず、慄然とせざるを得なかった。
「ああ、幕府は遂に仆されるのかもしれない」
フイと、そんな気持がした。