Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
日蔭の花
また気がついたところで、逃げられる気づかいのない穴蔵だ」
スタスタと廊下を先に歩きだした。
お十夜の方は、まだ幾らか、お綱に気がかりを残すらしかったが、ぜひなく、周馬についてそこを出る。
玄関へ出るのかと思っていると、そうではなかった。
真っ暗な、奥の一間へ入って、床脇の壁をギーと押した。壁に蝶番いがついていて開くのである。と、床下へ向って深く、石の段がおちこんでいる。
二人の影がそこへ消えた。
表構えを釘づけにしてあるとみせて、周馬は、たえずここから出入りしているものらしく、馴れた足で、まっ暗な道を、サッサと先に歩いてゆく。
と。――星がみえ、木の葉が見えて、やがて数十歩で出た所を見廻すと、お茶の水の崖である。
日蔭の花
「あ……っ……」
と、かすかに動いた影がある。
お綱は、やっと意識づいた。――気がついて、ジッとあたりを見廻したが、そこは、音もなく、光もない、まったくの暗黒。
どこへ――という気もなく、お綱は、よろりと立ち上がった。
「オオ、どうしたのだろう……私は? 私は? ――ああ、墜ちたのだっけ! 妙な所へ」
何物へか触れようとして、泳ぐように歩きだしたお綱は、墜ちた時の体の痛みに、思わずそこへ仆れてしまった。