Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
投げ十手
いつも織るような人どおりだ。
ついそこの魚河岸から、威勢のいいのが鮪や桜鯛をかついで、向う見ずに駈けだしてくるかと思うと、お練りの槍が行く、お駕が従く――武士や町人、雑多な中に鳥追の女太夫が、編笠越しに富士をあおいでゆくのも目につく。
「あら……」
と驚いて、太鼓反りの橋の上で、塗歯の下駄の踵を上げた女があった。
蔵前ふうの丸曲髷に、曙染の被布をきて、手に小風呂敷をかかえている――、で、二、三日前とは、すっかり服装が違っているので、ヒョイと見違えてしまうけれど、それはまぎれもないお綱の変身。
「ちイ……」と、舌打ちをして踵を上げたのは、向うへ駈けだしていった子供の奴凧が、お綱の白い脛へからんだのである。
「辻占が悪い」
面倒くさそうに糸を取りのけて、そのまま四、五間歩きだしたが、橋の袂で、ちょっと足を止めていた。
そこには今日も相変らず、珍しからぬ人立ちがしていた。何かというと、心中のしぞこないだ。御法によって男女とも、生きながらの曝し者となり、鰒食ったむくいとはいえ、浮名というには、あまりにもひどい人の目や指にとり巻かれている。
「あれッ?」
馬鹿な顔をして、それを見ていた一人の男が、不意に、すっ頓狂な声をだして、ふところや袂をハタき始めた。