Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
代々木荘の密議の半日。午後になって、ようやく何かの諜しあわせが一決したとみえ、
「では、早速がよいぞ」
と、窓の内で左京之介の声がした。その時、紅白の山茶花がポトリと黒土の上へこぼれて、上の障子が細目に開く。
脇息を離れて、窓ぎわへもたれた左京之介の半身と三ツ扇の紋がみえた。
「只今、予が申したような順序をふめば、いずれお上より、何らかのお沙汰があるに違いない。天下の大事、よも、お捨ておきになる筈はない」
「はっ」
密話がすんだので、弦之丞と常木鴻山、二、三尺ほど後へ辷って、きちんと両手を膝に正していた。
「さすれば、その儀について、この輝高がお召をうけるは必定である。その時、お上のお訊ねに対して、そちたちの願望、足かけ十年の苦衷、つぶさに申し上げる所存。また、この輝高の意見としても、阿波探索の必要をおすすめ申し上ぐるであろう」
「ひとえに、御助力のほど願わしゅう存じます」
「いや、そち達に頼まれいでも、大公儀にとって由々しい問題じゃ。必ずこの上ともに、輝高をうしろ楯と思うがよい。しかし、京の公卿たちと気脈を結んで、幕府を倒そうとする阿波そのものの陰謀、たとえ歴然たるにいたせ、確たる証拠をつかまぬうちは、どこまでも、この儀世間に洩らしてはならぬぞ」